久しぶりに手紙を書くことになりました。
星屑書簡という素敵な手紙です。

最近夜空を見上げることはありますか?

私は仕事柄、よく空を見上げています。私の仕事は、流れ星を作ることです。こうやって書くと、とてもロマンチックな仕事に思えてきますが、誰もやっていないことへの挑戦というのはワクワクすることも多い反面、大変なことも多いです。人工衛星を作り、そこから流れ星の素となる粒を放出して流れ星にする、そんな原理です。

これまでも乗り越えなければならない壁を数多く経験してきましたが、新しいことをやると、本当に思い通りにいかない。けれど、そのたびに壁を乗り越えたり、突き破ったり、別の道を探したりして、振り返れば壁だと思っていたものがドアだったことがよくあります。そんな最近もさまざまな決断に迫られ、思考が渦巻いているところです。

この夏、ちょうど用事があって実家に帰省していました。ふと思い立って車を出し、15分ほどの距離にある鳥取砂丘に行ってきました。

思い返せば、幼稚園の時から高校を卒業するまで、遠足といえば毎年鳥取砂丘でした。歩いていくと1時間以上かかる砂丘。冬にはスキーをしたこともありました。高校生のころには、自転車で砂丘に行くこともしばしばありました。大学生のころ、砂丘に寝ころびながら流星群を観ていたのは、もう20年以上も前のことです。

昔と違い、最近は砂丘に星を観にくる人が増えたように感じます。昔は夜、砂丘は人がいるところではなかったですから。

回想が長くなりましたが、この夏、思考で渦巻いていた頭を砂の上に寝かせ、空を見上げました。久しぶりに落ち着いて深呼吸できたような気がしました。砂丘の空気は、海辺ということもあり、柔らかな湿気を含んでいて、初夏の日没後はとても心地がよいのです。

私は鳥取の空気がとても好きです。たぶん鮭が生まれた川に帰ってきた気持ちもこんな感じなんだろうかと思うほど、深い呼吸を許してくれます。そういえば、この感覚は学生時代、鳥取で窮屈な思いをしていたころとは全く違います。あのころは、この場所を窮屈で退屈な街だと感じていました。どうしようもない閉塞感を、山陰特有の曇天に重ねていました。

今ではわたしの帰る場所、深呼吸してエネルギーをチャージする場所になっています。

目が慣れて天の川がみえると、広大な宇宙の広がりを感じ、自分の存在が宇宙の一部分に過ぎないことを心から感じました。地球は太陽系のなかの一つの惑星ですし、宇宙には太陽のような恒星がたくさん集まって銀河を作っていて、わたしたちはその天の川銀河の隅っこにいるにすぎません。銀河も宇宙にはたくさんあって、銀河団を形成しており、さらにその銀河団も集まって超銀河団に、、、、、

砂丘でひとり星空を見上げていると、なんだか今まで悩んでいたことが、ちっぽけなことに思えてきました。わたしの頭を渦巻いているものに結論はまだ出ていないけれど、「まぁ、なんとでもなるか」と思えるようになりました。何か問題が起こったら、ここに戻ってきて夜空に心を透かせばいい。その安心感が、今のわたしを支えています。

心の中でなにかが整理され、新しい視点や気づきをふともたらしてくれる。それが星空が主役の鳥取砂丘の魔法です。そして、その魔法によって前を向く勇気が湧いてくるのです。この場所が教えてくれるこの感覚さえあれば、どんなこともきっと乗り越えられる。その確信が、私をポジティブにしてくれます。

近頃、わたしの前に立ちはだかっているように感じる壁も、元はといえば、自分が作り出したものに過ぎない。砂丘に寝転び、宇宙の大きさを感じながら、そんなことに気付かされた夏の帰丘でした。

あなたも、なにかに思い悩んだら、宇宙の広大さに思いをはせてみてください。たいていのことがどうでもよくなって、元気になりますから。